コラム
COLUMN
製品名:EXEX生産管理
連載コラム10 品番/品目コードについて
これまで記事の中で何度となく品番もしくは品目コードという語を使ってきましたが、生産管理システムや販売管理システム、在庫管理システム、原価管理システムのどれを導入する場合でも最初に考える必要のある品目コードについて留意すべきことを思いつくまままとめてみました。
筆者がERP導入支援をしてきたタイの企業の多くは、ERP導入以前には品番/品目コードよりも品目名で管理しているケースの方が多かったと感じています。ERP導入を契機として品番/品目コードを整理する際に、様々な誤解・勘違い故にマスタデータ整備が遅れるケースがありました。
原則1:品番/品目コードの区切りは中間品として在庫に計上する区切り
製造業の場合、管理が大変になるので全ての工程ごとに品番/品目コードを付番することは通常行われません。では、どういう区切りで品番/品目コードを付番するのでしょうか?
この時の判断基準は
- 仕掛在庫と扱うなら品番設定はしない
- 仕掛品にしておくのは、その状態からは他の品目で使われることが絶対に起こらないという状態である
- 一旦工程作業場から中間品倉庫などへ移動させるタイミングで品番/品目コードを付番
と筆者は考えます。
原則2:1つの品番/品目コードは標準原価・設計図面が一意になる単位
コンピュータで扱う品番/品目コードは一意でなくてはなりません。ERPでは品番単位でMRP計算、原価計算、棚卸在庫評価計算などを行うので品目名で識別するやり方は不可能です。品目名でP/OやInvoiceや生産指示を出しているときはこのルールが曖昧でも可能でしたが、ERPを導入すると必ず遵守しなければならないルールとなります。
1つの品番/品目コード標準原価が一意になるか否かとは言い換えると
- 機械
- 作業員が変われば原価が変わる実際原価ではない
ということと同意です。
また設計図面が一意になるとは
- 工程手順や加工機械が変わっても図面が同じならば同じ品番/品目コードと考える
- たとえ顧客注文書にある品番コードは同じでも設変で図面が変わっていたら別コードで管理しなければならない
ということにつながります。
顧客品番
顧客注文書に記載される顧客品番と社内品番/品目コードは分けるのが普通です。顧客品番は同じでも社内の設変番号が異なると原則2の「1つの品番/品目コードは標準原価・設計図面が一意になる単位」に反することになります。したがってERPでは顧客品番から自社品番へのコード変換マスタを持たせるのが普通の考え方です。
工程が変われば品番も変わる
筆者が見てきたケースでは、
- 外注支給した品番と外注加工完了後の品番を同じにしているケース
がありましたが、これは原則2の「1つの品番/品目コードは標準原価・設計図面が一意になる単位」に反します。なぜなら、外注加工したら外注加工費がのるはずで、標準原価は変わるからです。
なお、品番/品目コードは原価計算での積上げ計算の基本になります。同じ品番で標準原価が2つあるということはありえません。したがって工程が変われば品番/品目コードが変わるというのはどんなERPを使おうとも変わらぬ真理と言えるのではないかと筆者は考えます。
上記の例に限らず、ERP導入前には無雑作に同じ品番/品目コードで管理してケースでも、ERP導入後はコードを分けなければ運用できないケースが起こりえます。
計量単位が変われば品番/品目コードを変えた方が良い場合もある
生産管理システム、原価管理システム、販売管理システム、在庫管理システムにおける暗黙の前提条件に
- 1つの品番/品目コードの計量単位は1つ
というのがあります。
例えば、この部品はPCS(個)で管理するとか、この鉄はKgだとか、この液体はL(リットル)だとかといったことです。しかし、購買・販売では12個で1ダース、100個で1セットという単位で売買しているなどのケースが普通に起こりえます。とは言え、このケースでは通常ERPの販売管理/購買管理機能が吸収してくれるので特に問題はありません。
しかし、以下のようなケースでは計量単位と品番/品目コード設定に注意が必要です。例えば化学系業種など業種によっては
- 販売単位は容器種別、購買単位はL、移動平均やFIFOによる在庫台帳での表記単位はKg
など目的によって計量単位が変わることもあります。
計量単位が変わると在庫数や在庫金額が小数点で誤差が生じることもあることも要注意です。できるだけ、単位の変更が発生しないようにERP導入前に社内で検討することが重要です。様々なケースがあるため一般論ではありませんが、上記のように計量単位が変わるケースでは品番/品目コードを分けた方が管理が楽になることもあります。
状態管理と混同させない
品番/品目コードを考えるとき、状態管理まで考えてしまう人がいますが、品番/品目コードには状態は含めません。
状態とは例えば
- 製造現場に払出しする前と後
- 受け入れ検査をする前と後
- 外注先に支給した前と後
などのことです。原則2の「1つの品番/品目コードは標準原価・設計図面が一意になる単位」を考えると、上記のような状態が変わっても標準原価が変わっているわけではないので品番/品目コードは同じであることが理解できるのではないかと思います。
なお、上記のような状態管理は倉庫コードを変えることで管理できることもあります。例えば、検収前は検収前倉庫に入庫させ、検収後は検収完了倉庫に移動させるというようなやり方です。
BOIプロジェクトとして輸入関税の免除がある場合
自社BOIプロジェクトとして輸入関税の免除を受けているようなケースではBOIプロジェクト適用対象の輸入品と適用対象外の輸入品(例えばBOIプロジェクト対象外品目製造に使われる材料)では同じモノでも品番コードを分けた方がよいです。このケースでも原則2の「1つの品番/品目コードは標準原価・設計図面が一意になる単位」を考えると、輸入関税のある/なしで標準原価は変わるので品番/品目コードを分けるべきということが理解いただけるのではないかと思います。
なお「分けたほうが良い」と断定できないのは
- ERPの運用のしかたによってはサイトコードを分けてしまうなどのやり方もある
- 仕入は商社を通しているので仕入時点では原価が変わらない
などのケースがあるためです。
桁ごとに意味を持たせる品目コードについて
品番/品目コードに桁数を区切って意味を持たせるやり方があります。例えば
- 0-2桁:品目分類
- 3-10桁:工程コード
- 11-15桁:連番
のように桁区切りに意味がある設定です。
これはタイ人の発想というよりも、工場立ち上げ時に日本から支援に来ていた管理者の発想がいまだに続いていることがタイでは多いように思います。このやり方は慣れてしまうと品番/品目コードを見ただけで、どんなモノかすぐにイメージできるという優れた点もありますが、ERP導入後はそれほど気にしなくても良くなるケースもあります。なぜなら通常ERPでは、品番/品目コードに紐付けて製品カテゴリや工程、標準加工機械(資源)など様々な属性が管理でき、売上集計などの各種データ集計・照会の際にはこれらの属性を画面から指定することができることが多いためです。
また、単純な品番/品目コードであってもコンピュータシステムを使えば品目コードと品目名を常にペアにして表示するのが普通です。したがいましてコンピュータ利用を前提にすれば、品番/品目コードにあれもこれも詰め込まないいけないという心配からは解放されるはずです。
品番/品目コードに桁数を区切って意味を持たせるやり方は、半導体が高価でコンピュータで使えるメモリ量に制限があった時代には必須のコンセプトでしたが、現在のように半導体が安価になり、リレーショナルデータベースの普及によってデータの属性やデータとデータとの依存関係などの「リレーション」管理が容易になった現在においては昔ほどは重要ではないのではないかと思います。
品番/品目コードを設定するのは誰か
会社によっては品番/品目コードの設定は経理の仕事、と考えている会社がありましたが、筆者はこの考え方には賛同できません。上記で説明したような様々なケースを適切に判断できるのはモノ作りの現場や得意先や仕入先の事情がよく分かっている方で、通常これは経理スタッフの得意分野ではありません。品番/品目コード整備には工場業務全体を鳥瞰的に俯瞰できる管理者が必要になる、とご認識して頂いた方がよいのではないかと筆者は考えます。